第15話 プラスチック部品の設計法(1)[肉厚はどの様にして決める?]

プラスチック部品を設計する場合、目的の機能を果たす形状を考え出すのがまず第一ですが、次には具体的に各部の寸法を決定する必要があります。
では、最初にどの様にこの部品の肉厚を決めて行くのかについて考えてみたいと思います。

①要求機能からの制限事項
これはプラスチックに限らず、どの部品にも当てはまりますので、通常の設計者の方ならある程度の感度はあると思います。
「強度」「重量」「材料コスト」「外観」等について、制限事項を満足するものでなければなりません。
「強度」を重視し厚肉にして重量UPになったり、その結果材料コストがUPしたり、各々の制限事項は互いに二律背反の関係になっていることが多いと思いますので、このバランスを上手くとるのが設計者のセンスでしょうね。
CAEを利用すると、無駄に肉厚を厚くすることがなく、強度的に最適にできることが多いと思います。

②成形上の制限事項
射出成形を例に取ると、成形時の「流動性」「サイクル」「離型」「二次加工」等を考慮しなければなりません。
それでは、様々な肉厚の場合、どの様な特徴があるのでしょうか。

(1)厚肉の場合
「流動性」 :金型内の流れは良く、低い射出圧力で成形できます。
「サイクル」:射出時間、可塑化計量時間、冷却時間が長くなりますので、1サイクルに多くの時間を要します。
・その他課題:体積収縮、表面と中心部の冷却速度差、分子配向差などが生じやすい為、その結果、残留応力による反りやヒケ、空洞などが発生し易くなります。

(2)薄肉の場合
「流動性」 :金型内の流れは悪く、ショートショットが発生し易くなります。この為、高圧力での成形ができる射出成形機を必要とする場合もあります。
「サイクル」:特に冷却時間を大幅に短くできる為、1サイクルの時間を短くできます。
・その他課題:高圧で成形した場合は、圧力による歪で反りが生じ易くなります。 又、離形時の荷重によりクラックが発生することもあります。

(3)肉厚が不均一な場合
溶融樹脂はゲートから均一に流れず、最初は厚肉部分に流れ、厚肉部分の充填圧力が上昇してから薄肉部分に流れます。
従って薄肉部分には低温低圧の状態で充填されることが多い為、フローマーク、ウェルドラインが発生し易くなります。
薄肉部周囲が厚肉の場合、エア抜け不足でガス焼けやショートショットになることもあります。
又、冷却効果が厚肉部と薄肉部で異なる為、冷却収縮歪が発生し、これによる反りや寸法バラツキが発生し易くなります。

(4)標準肉厚
例外はありますが、一般的には0.8~4.0mmの範囲で肉厚設定した方が良いでしょう。
その上で、上記の(1)~(3)を考慮し、各部位の肉厚を設定してください。