第10話 品質目標はどのレベルを狙っていますか[品質とコストの関係]

あなたの会社が掲げている不良率の目標はどれくらいですか?
恐らく「不良率ゼロ」を掲げているところが多いのではないでしょうか。
確かに心構えとしては絶対「不良率ゼロ」を目指すべきでしょうね。
ただ、ここは技術コラムですので、品質とコストについて論理的に考えてみたいと思います。

オペレーションズ・リサーチ(ORとも言います)の中では、品質レベルとコストの関係は下のグラフの様に相反する関係であり、一般的には青線緑線の総和である赤線の極小値[B]を狙うのが最も適切ということになっています。
後付けになりますが、オペレーションズ・リサーチというのは、「科学的運営研究(又は問題解決研究)」のことで、様々な問題を科学的、つまり筋のとおった方法で解決する為の学問です。

 

 

 

 

 
 

このグラフでは「不良率ゼロ」は莫大なコストがかかり、有り得ない状態であることが判ります。(この前提はもちろん十分多い生産量ということであり、数個、数十個レベルの生産量の話ではありません)

ここで、もう一度、最初の質問です。
あなた、もしくはあなたの会社の不良率目標はどれくらいですか?
定量的な回答は難しいと思いますが、イメージは持っておく必要があるでしょうね。「不良率ゼロ」なのか、グラフ中の「A」なのか、「B」なのか、或いは考え難いですが「C」なのか。

当然、生産品の種類や会社の方針によってそのレベルは異なるでしょう。
例えば、医療関連などの製品ですと「A」もしくはそれそれより低い不良率が求められることもあるでしょう。
ただ、しっかりと品質レベルのイメージを持っていなければ、不良発生時に判断を誤り、ある時は「不良率ゼロ」の掛け声に引っ張られて莫大なコストをかけてしまったり、又、ある時は品質管理の手を抜いて、不良による大きな損失を被ったりする可能性がありますね。

製品開発でも一般的にはこのグラフの様になると考えられます。つまり、品質レベルの高い製品を設計しようと思えば、例えば板厚を上げて強度を高めたりするとコストが高くなりますし、コストを低くしようと思えば強度をギリギリまで下げて結果として品質レベルが下がったりします。

本来、良い製品というのは、『その製品を買った人が支払った代金に応じて期待する製品のハタラキのイメージに合致するもの』だと思います。 従って、開発者は自分が設計する製品の品質とコストのイメージをよりしっかりと持っておく必要があります。
又、『製品のハタラキ』というのは、『品質』を示す場合もあり『機能』を示す場合もありますので、『高品質』に拘って、『高機能』がおざなりになる様なことがあってはなりません。

結局、開発者は『品質』『コスト』『機能』そして『開発期間』のバランスをしっかりと取らないと良い製品を生み出すことは難しいでしょうね。

最初の品質とコストの関係に戻りますが、開発者はこの二律背反の最適点を求めるだけではなく、下のグラフの様に赤線を下にスライドできる様な、画期的な設計、生産技術を目指したいものです。
これが開発の醍醐味なのかもしれませんね!!