第6話 CAEは本当に使えない!・・のか? [時間がかかる・・費用が高い・・]

今回は「CAEは時間がかかる!」、そして、「費用が高い!」ということについて考えてみたいと思います。

CAEは、①[モデリング]→②[計算]→③[結果の考察]という手順で解析を進めて行きます。
解析対象品の形状や解析内容によりますが、通常[モデリング]は最低でも数時間は必要です。
あと、[計算]の時間はコンピュータの能力、[考察]の時間はどこまで深く掘り下げるかによりますが、合わせて数時間というところでしょうか。
更には複数の解析ケースを検討したり、最適解の探索等で試行錯誤が必要な場合はその数倍の時間が必要になります。

例えば解析を48時間(6日)で完了し、時間当たり単価を8,200円(神奈川県立産業技術総合研究所の受託解析 インターネット情報)とした場合、総費用は約39万円ということになります。

この金額が高いか安いかについては、お客様がその解析結果にどの程度の価値を見出すか・・ということによりますが、解析側としては、同じ価値を維持しつつ時間を短縮する方法を模索して行く必要があるでしょう。

実物どおりにモデリングして、実物と同じ様な条件設定をすれば、見かけは実物と違わない解析結果を得る可能性は高くなりますが、一方、「見かけを同じ・・」にすることにこだわり過ぎると、そのことに多くの時間を費やしてしまいがちになります。

この「見かけを同じ様にする」ことは、案外具合が良く、お客様の好印象を得るだけではなく、解析者自身も実物そのままにモデリングにすれば良いのですから、精神的には楽です。

ただ、解析者は「見かけを同じにすること」に注力するのではなく、お客様の解析目的を把握した上で、目的に沿った形でモデリングの簡素化、最適な解析方法の選択をしなければならないでしょう。
モデリングを簡素化すると、「計算結果は大丈夫か」、「誤差は許容範囲か」等、不安になることはありますが、それは材料力学や材料の知見を総動員して、簡素化→時間短縮→費用低減に努めるべきでしょう。

一方、解析の時間単価は適切なのかということですが・・
公的機関の設計・解析の受委託料金を調べてみますと、国土交通省の設計業務委託単価は設計で3,800~8,200円/hr、上記の産業技術総合研究所の受託単価は設計で5,000円/hr、解析で8,200円/hrとなっています。

結構、高額ですね。
この単価ですと、「内製化した方が良いのでは・・」とも考えてしまいます。

例えば年収600万円の大卒技術者を雇用し、CAE業務を専任で行わせたとします。その場合、会社としてはどれくらいの費用が発生するのでしょうか。
代替、950万円くらいの費用になりそうです。(その内訳は給与以外に社会保険料等で90万円、退職金引き当て40万円、ソフト等の減価償却と保守料で120万円、その他通勤、出張、光熱、設備、福利厚生、間接費等で100万円)
勤務時間を年間2,000時間とすると、その内解析の実業務に使える時間は1,600時間くらいでしょうから、内製化の時間単価は約6,000円になります。

この時間単価ですと、上記の受委託単価とそれほど差異がなさそうですね。
このあたりの時間単価が妥当な金額だとも言えそうです。(受託する場合はこれに利益も加えないといけないですしね・・)

つまり、企業としては終始解析を必要とする場合は内製化が候補になりますが、時々しか解析を必要としない場合はアウトソーシングが有効なのでしょう。

アウトソーシングの場合は都度の発生費用が目に見えますし、その結果が、情報という無形のものですので、高額に思われがちですが、内製化して専任者を雇うことを考えれば、高くないのかもしれませんね。

大切なのは、お客様は費用に見合う解析テーマなのか否かをしっかり判断し、解析者はそれを如何に高付加価値、短納期で実行するか・・を常に頭に入れておくことですね。

短納期にすることは費用のみならず、開発期間短縮にも大きく寄与するはずです・・。